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ILO労働契約で決めてはならないこと企業は,労働契約の締結にあたって,労働契約を履行しないときは債務不履行として,○万円の違約金を支払うことや,企業に債務不履行によって損害を与えた場合には,○○万円の損害賠償額を支払う旨の契約をしてはいけないことになっています。
これを,賠償予定の禁止といいます(労基法16条)。
問題となるものに,企業が費用を負担して社員に海外留学や技能研修をさせるかわりに,一定期間の勤務を約定する場合がありますが,その内容が,一定期間勤務すればその費用に関する返還義務を免除するというのであれば,労働契約の履行不履行と無関係に定められたものですから,賠償予定の禁止には該当しないといえるでしょう。
その他,労働基準法は,17条において「前借金相殺の禁止」,18条において「強制貯金の禁止」について定めていますので,注意しなければなりません。
採用内定の取扱い採用内定通知の法的意味は従来,わが国では,新規学卒者を採用する場合には,優秀な人材をできるだけ多く確保したいということから,一般に学生の在学中に募集と採用選考を行い,卒業後の入社にむけて採用を決定した入社予定者である旨の,いわゆる「採用内定通知」の送付を行い,学生に期待と拘束状態をつくりだし,学生からの入社誓約書や身元保証書などの提出を求め,健康診断や入社前研修などの過程を経て入社日における入社式に至るのが普通ですが,入社を取り消された場合には,この採用内定の一連の行為を法律上どのようなものとして理解したらよいかが問題となります。
この点について,最高裁判例は,企業に採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意』思表示をすることが予定されていない場合には,企業からの募集(入社申込みの誘引)に対し,学生が応募したのは労働契約の申込み(入社して働きたいとの意思表示)であり,これに対する企業からの採用内定通知はその申込みに対する承諾(企業の採用しますという意思表示)であって,採用内定通知により労働契約の成立であるとする旨判示しています(Dn印刷事件・最高2小判昭54.7.20民集33巻5号82頁,D公社近畿電通局事件・最高2小判昭55.5.30判時968号114頁)。
しかし,それは通常の労働契約とは異なり,労働契約関係の実際の開始は卒業後の入社日とする始期付であり,またそれまでは学生の態度などによって内定の取消しもあり得る解約権を留保した特別な労働契約であるとしています(始期付解約権留保付労働契約の成立)。
このような最高裁判例の背景には,窓意的な採用内定の取消しから学生を保護しようとする配慮があるといわれていますが,いずれにしろ,ここで注意しなければならないのは,「採用内定通知のほかに労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていない場合」に,一般的に「採用内定通知をもって労働契約の成立としても差し支えないのがわが国の新規学卒者の採用実態である」と判示しているのであって,採用内定が企業の「採用します」という最終的な意思表示であるかは個別に検討されなければならない性格のものであるということです。
したがって,単に「採用が内定しました」といった旨の採用内定通知だけで,入社誓約書,身元保証書などの必要書類の提出や入社日の具体的指定,入社前教育としての研修の開始日などの日程が後日に予定されているような場合には,当該採用内定通知は,企業の最終的な採用の意思表示とはいいがたく,この段階では,労働契約締結の予約であり,労働契約の成立までには至っていないということになります。
ですから,採用内定者といっても,労働契約締結の予約の段階にある「採用予定者」と始期付解約権留保付労働契約の締結が認められた「採用決定者」がいるということになるわけで,両者には,大きな違いが生じてくることになります。
採用内定新規学卒者の募集会社案内送付会社資料送付先輩より連絡役員面接先輩面談人事部面接応答面接後で説明する内定の取消しにおいて採用内定の取消しはどのような場合に正当となるか企業は,一般に採用内定通知ないし入社誓約書などに採用内定通知の取消事由を明記していますが,前掲・Dn印刷事件最高裁判例は,始期付解約権留保付という特別の労働契約が成立したと認められた後の取消しについて,「採用内定の取消事由は,採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できないような事実であって,これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められた社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。」とし,採用内定通知ないし入社誓約書などに明記されている採用内定の取消事由に該当する事由が発生すれば常に採用内定を取消せるというものではなく,逆にその明記が不十分な場合については「社会通念上相当として是認することができる」相当事由があれば解約権を行使できることを明らかにしています。
したがって,採用内定通知ないし入社誓約書などに明記されている「提出書類への虚偽記入」といった取消事由について,単に虚偽の記入という事実だけでは足りないのであって,その内容・程度が重大なもので,それによって社員としての不適格性などが判明した場合に限って効力を生じるとした裁判例があります(Ht製作所事件・横浜地判昭49.6.19判時744号29頁)。
いずれにしろ,始期付解約権留保付という特別の労働契約が成立したと認められた後の採用内定の取消事由について,前掲・Dn印刷事件最高裁判例に従えば,一般的に正当と認められるのは,大体次のような場合であると思われます。
学校を卒業できなかった場合・・新規学卒者を採用要件としている以上,当然の取消事由であるといえます。
提出書類や面接に虚偽の事実があった場合履歴書などの提出書類や面接において虚偽の申告が認められれば,一応取消事由とはなりますが,前掲・Ht製作所事件判決による制約があります。
入社日以降の労務の提供に支障が生じた場合健康異常の発生,犯罪行為による逮捕・起訴,行方不明などにより入社日以降就労できなくなった場合。
企業側の業務上の都合による場合採用内定後の景気変動その他の経済的変化などによって正当な理由を立証できる場合も,一応取消事由となりますが,この点については裁判所は概して厳しい態度をとる傾向にあります。
不可抗力による企業の物的施設の崩壊の場合阪神大震災のような不可抗力により企業の物的施設が崩壊し,企業の再建に時間がかかり,新規学卒者を採用するだけの余力のない場合など。
<入社前研修〜入社までのスケジュール例>内定通知送付正式採用通信教育健康診断実施入社までの案内入社前研修入寮手続採用試験実施受入し入合入出試このように合理的と認められる正当な取消事由がない場合には,その取消しは無効となります。
まして,それが企業の窓意的な取消しであるという場合には,債務不履行や不法行為にもとづく採用内定者の損害賠償請求が認められるということになり,前掲・Dn印刷事件最高裁判例においては,入社期待権の侵害として100万円の慰謝料が認められているところです。
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